「ピンポーン!」
ある日突然(仲が悪い訳ではないけれど、特別懇意にしている訳でもない)お隣りさんが訪ねて来て、「ナニゴト?!」と思ったことはありませんか?
お隣りさんは業者を連れて、挨拶に来ましたとのこと。その業者は、おそらく外壁塗装屋さんか土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)です。
私たちは後者の土地家屋調査士です。
土地所有者さんからの依頼を受け、まず、隣地所有者さんに境界確認のための測量のご挨拶と境界立会いのお願いにお伺いします。
測量はわかるけど、「境界立会い」って何するの?
そもそも必要なの?
ご挨拶にお伺いした際によく受ける質問です。
急に業者が来て、「境界?」「確認?」と不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。それもその筈です。 境界立会いの機会なんて、一生のうちにそう何度もあるものではありませんから。
しかし、それはお隣りさんとの境界をハッキリさせるいい機会でもあります。
今回は、
・ 境界立会いは何のために必要なのか?
・ 実際にどんなことをするのか?
を、境界についての専門家である土地家屋調査士が詳しくご紹介します!
目次
1 境界立会いとは
『境界立会い』 普段の日常の中では、あまり聞かないフレーズかもしれません。境界立会いとは、自分の土地とお隣りさんの土地との境を明らかにさせるためにするものです。
「いやいや、お隣りさんの土地との間にはブロック塀が
建ってるから、境界はハッキリしてるでしょ。
確かにブロック塀や万年塀等で自分の土地とお隣りさんの土地が仕切られていることが多いです。では、その塀のどこを境界線が通っているのでしょう?
塀の内側? 外側? それとも中心? もしかしたら、その塀は境界とは全く別のところに建っているのかもしれません・・・
そう。ブロック塀が建っているところが境界、という認識では不十分なのです。
境界トラブルを起こさないために、現地で『境界立会い』を行い、土地所有者さんの境界(筆界)についての認識を互いに確認する必要があります。
1-1 境界立会いって必要なの?
結論から言えば、必要です。
境界(筆界)は自分の土地とお隣りさんの土地の境目にあるものなので、それの確認には現地での両者の立会いが必須です。互いの境界(筆界)の確認は、お互いの協力無くしてすることができないのです。
今回は、お隣りさんに境界(筆界)確認の必要が生じ、そのための立会いのお願いがあったのかもしれませんが、土地を所有している限りは将来自分にもその必要が生じる可能性は多分にあります。
お隣りさんのために時間を割いて立会いなんて
面倒だから嫌だ。
確かにあなたには今すぐ必要ない作業かもしれません。しかし、境界(筆界)立会いはあなた自身の問題でもあるのです。
1-2 どんな時に必要?
多くの場合、土地の正確な面積を算出したいときに必要となります。
面積を求めるためには、境界(筆界)の位置を正しく把握する必要があるのです。
大きく分けると2つのケースがあります。
② 土地を売却する時
※ 地積更正登記は、法務局(登記所)において記録されているその土地の面積を実際に測量した結果の面積に訂正するために申請します。分筆登記は、1つの土地として記録されている土地を2つ以上に分割する際に申請します。
いずれの場合もその土地の正確な面積を出すために境界確定測量(境界確定の記事へ)を行います。
正確な面積を算出するには、その境界(筆界)についてお隣りさんの認識とズレがないかを確認する必要があります。
正確な面積を算出したいとき以外にも境界立会いを行うことはあります。
たとえば工事等により境界標がなくなってしまったので復元したい、というケース です。
1-3 立会いってどんなことするの?(準備、所要時間)
境界(筆界)立会いは、お互いの土地の境目を確認するために行うものです。
具体的には・・・
① 現地に設置されている境界標を確認する。
⇒ それぞれの土地の境界(筆界)を示すしるしである境界標ですが、地中深く埋まっていたり、塀の真下にあり目視できなくなっていたりすることも多いです。
(地中に埋まっている境界標)
(塀の真下にある境界標)
すべての土地のに境界標が設置されているわけではありません。設置されていても、塀や道路の工事により最初にあった場所からズレていることも少なくありません。
② 境界標がないまたはズレている場合は、資料を基にして現地に設置した仮の境界点を確認する。
⇒ その場合は、法務局の管轄出張所(登記所)や役所などに保管させている図面や以前に測量した時にもらった個人で保管されている図面等から境界点を導きだし、それが現地のどの辺りにくるのか仮の境界点(木杭やペンキ)を設置します。
所要時間は・・・
いずれの場合もスムーズにいけば、10分程度です。
互いの境界認識にズレがある場合は、時間がかかります。1時間以上話し合うこともあります。境界(筆界)はお互いの財産に関わる大事なことなので、両者に納得していただけるまで最善の努力をします。
土地家屋調査士は、境界標の有無に関わらず、登記所や役所で保管され公になっている図面等の資料をかき集め、測量のデータと照らし合わせ、精査した上で境界立会いに臨みます。
以前に御自宅の敷地の測量をしたことがあれば、その時にもらった図面も境界についての大事な資料となるかもしれませんので、立会いの前に土地家屋調査士に提示した方が良いでしょう。
2 境界立会いの流れ
次に境界立会いの流れをお願いする側(依頼者)とされる側(お隣りさん)に分けて見ていきましょう。
① 測量の挨拶と立会いのお願い
測量をすることが決まったら、まずお隣りさんに測量の挨拶と境界立会いの依頼をします。
今回、ウチの測量をすることになったので、よろしく
お願いします。
○○さんのお宅を測量させていただきます、土地家屋調査士の△△と申します。よろしくお願いします。測量に伴いまして、隣地所有者様に境界立会いのお願いをさせていただいております。-略-
はい、わかりました。
木曜日が休みだからだいたい家にいますよ。
② 測量(立会い不要)
後日、測量にお伺いします。 測量は、基本的に依頼者さんの敷地内から行いますので立会いは不要ですが、境界標が塀の外側(お隣りさん側)にある場合は、事前に承諾をいただいた上で敷地内に立ち入らせていただくこともあります。
③ 立会日の調整
測量が終わりましたら、境界確認のための立会いの日時について相談させていただきます。
○月○日木曜日の午前10時から境界確認の立会いをお願い
したいのですが、御都合いかがでしょうか?
その日は終日家にいますから大丈夫ですよ
④ 境界立会い
依頼者さんとお隣りさん立会いの下、先に行った測量のデータと境界(筆界)についての資料を照合した結果を現地にて御説明致します。
こちらとあちらに境界標が設置されており、それを測量した結果と登記所に保管されています地積測量図の内容は合致しております。この境界標を結ぶ直線がお互いの境界(筆界)というご認識でよろしいでしょうか。
はい。結構です。
はい。結構です。
⑤ 筆界確認書の取り交わし
現地でお互いの境界(筆界)認識にズレがないことが確認できたら、その覚えとなる書面(筆界確認書)の取り交わしをします。 同じ内容のものを2通作成し、署名・捺印したものを1通づつ持ち合います。
(筆界確認書 表紙)
( 筆界確認書添付図面 )
3 境界立会いすることのメリット・デメリット
立会いをして境界(筆界)を明確にしておくことのメリットとデメリットについても依頼者とお隣りさんの視点で見てみます。
3-1 メリット
・境界トラブルを未然に防ぐことができる。
・今後いつでも、好きなように自分の土地を分ける(分筆する)ことができる。
・境界についてお隣りさんと争いがないことを証明でき、土地の売却をしやすくなる。相続のときに子供たちにスムーズなバトンタッチができる。
・境界トラブルを未然に防ぐことができる。
・立会い依頼があったところの境界が明確になる。
・無料で(依頼者さんの費用負担)で筆界確認書が手に入る。
・既存の境界標がない場合は、依頼者さんの費用負担で新設してもらえる。
3-2 デメリット
・費用がかかる(30万円~100万円ほど)
・境界の確認ができないことがある。結果、分筆や地積更正登記の申請・土地の売却が難しくなる。
・立会いのための時間を作らなければならない。
・自宅から離れたところに土地を持っている場合、(原則)そこまで行かなければならない。
4. 境界立会いに関するQ&A
土地家屋調査士法人として年間1000件以上の境界立会いの現場を経験する中で、よくあるご質問と回答をまとめました。
① 境界標及び境界線付近の様子を動画撮影し、メール送信
② フェイスタイムの動画通話にて説明(iPhoneのみ)
③ スマーフォンアプリLINEの動画通話にて説明
④ 説明用の図面等の資料と写真を郵送
5. まとめ
境界立会いをし、現地に境界標を設置し、更には境界確認書を取り交わしておくことは、境界トラブルを未然に防ぐための最も有効な手段です。
3章の【境界立会いをすることのメリット・デメリット】で触れたとおり、それをするメリットは、デメリットよりも遥かに大きいです。
わざわざ時間を取って立会ったり、書類のやり取りが面倒だと感じることもあるかもしれませんが、決して他人事ではありませんので、お隣りさんから境界立会いの依頼があった際には、是非とも協力をお願い致します。
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