「境界杭が見つからない」どうすればいいのでしょうか?
お隣からの境界立会いやご自宅の建築等で境界杭が見つからなく、検索されたのではないでしょうか。
境界杭が見つからない理由にはいくつかあります。
そもそも最初から境界杭がなかった場合、ブロックなどの外構工事や水道や下水等の工事で抜けてしまった場合、あまり考えたくありませんが故意に抜かれてしまった場合などがあります。
境界杭は見えない境界線を見える化できる大切なものです。
境界杭にはコンクリート杭、石杭、プラスチック杭等の種類があります。
境界杭が見つからない場合にはどのようなケースが考えられるのか?
ケース別の対処法は?
この記事では土地境界及び測量についての専門家である土地家屋調査士が、「境界杭が見つからない」状態についてわかりやすく解説します。
1 境界杭が見つからないケースとその対処法
境界杭が見つからない理由と対処法
見つからない理由 | 対処法 |
①最初から境界杭が設置されていなかった場合 | 最初から境界杭がない場合は、「土地境界確定測量」(注・下記参照)を行い、この測量で確定した境界点に「境界杭」を新しく設置します。 |
②ブロック工事や水道工事等で抜けてしまった場合 | 土地境界確定測量が済んでいる場合 土地境界確定が済んでいない場合 |
③地中や構造物の下にあり見えない場合 | 地中や構造物の下にあり見えない場合には削岩機やスコップでブロック等の構造物斫(はつ)ったり、穴を掘ったりして境界杭を探します。 |
それぞれについて解説します。
① 最初から境界杭が設置されていなかった場合
最初から境界杭がない場合は、「土地境界確定測量」(注・下記参照)を行い、この測量で確定した境界点に「境界杭」を新しく設置します。
最初から境界杭が設置されていないケースはよくあります。
最近では土地の売却に際し、土地の境界確定測量を行う場合が多いので境界杭(又は境界標)を設置することが当たり前になってきました。
しかし、境界杭を設置する義務はありません。
民法223条では「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。」と規定していますが、「しなければならない」ではないんです。
また、不動産登記規則第77条には「地積測量図には、境界標(筆界点にある永続性のある石杭又は金属標その他これに類する標識をいう。以下同じ。)があるときは記載しなければならない」と規定されています。
ここでも「あるときは記載しなければならない」であって「必ず記載しなければならない」ではないんです。
1,地積測量図には、次に掲げる事項を記録しなければならない。
一 地番区域の名称
二 方位
三 縮尺
四 地番(隣接地の地番を含む。)
五 地積及びその求積方法
六 筆界点間の距離
七 国土調査法施行令第二条第一項第一号に規定する平面直角座標系の番号又は記号
八 基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値
九 境界標(筆界点にある永続性のある石杭又は金属標その他これに類する標識をいう。以下同じ。)があるときは、当該境界標の表示
十 測量の年月日
地積測量図は土地を分けるための分筆登記や土地の面積を正しく直す地積更正登記に添付する図面で法務局において永久に保存されます。
(地積測量図)
対処法
最初から境界杭がない場合は、「土地境界確定測量」を行います。
確定測量とは、土地の境界(筆界)を確定するための測量です。
この測量で確定した境界点に「境界杭」を新しく設置します。
注)確定測量とは
確定測量とは、土地の境界(筆界)を確定するための測量です。
参考記事:土地の価値を高めるための境界確定のすすめ
https://www.en-groups.com/blog/boundary-determination
土地の境界は「筆界」と「所有権界」の2種類があり、確定測量は「筆界」を確定させるための測量です。
(境界、筆界、所有権界の関係)
(境界、筆界、所有権界の例)
土地の筆界と境界については「筆界・境界の違いを解説!思わぬトラブルを防止・解決する方法」にてより詳しくご理解いただけます。
② ブロック工事や水道工事等で抜けてしまった場合
土地境界確定測量が済んでいる場合
境界点に座標値があれば土地家屋調査士に依頼をして復元します。
土地境界確定が済んでいない場合
土地境界確定測量を行い、測量が済んでから設置します。
ブロック工事や水道工事等で抜けてしまうケースもよくあります。
ブロック工事や水道工事なのでは境界点の近くを掘削します。
この時に「境界杭」が抜けてしまう時があります。
コラム1
抜けてしまうケースで怖いケースもありますのでお伝えします。
ブロック工事や水道工事等で抜けてしまった場合、境界杭を抜いたままにしておいてくれればいいのですが適当に戻されてしまう場合もあり得ます。
当然善意で戻してくれているのでしょうが怖い話です。
コラム2
あまり考えたくないですが、抜けてしまったではなく、故意に抜かれたという場合もあり得ます。
私たち専門家もこういう話はよく聞きますが、見てはいないので本当のところはわかりませんが刑法262条の2でも「境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」という条文もあるくらいなのであり得ない話ではないです。
土地境界確定測量が済んでいて、境界点に座標値があれば土地家屋調査士に依頼をすれば復元することができます。
土地境界確定が済んでいない場合は、土地境界確定測量を行います。
ケース①と同じ扱いです。
③ 地中や構造物の下にあり見えない場合
地中や構造物の下にあり見えない場合には削岩機やスコップでブロック等の構造物を斫(はつ)ったり、穴を掘ったりして境界杭を探します。
地中や構造物の下にあり見えない場合は非常に多いです。
我々土地家屋調査士は確定測量を依頼された場合、測量の前段として境界杭を探します。
長く住んでいる間にブロックを積んだり土を盛ったりして境界杭が見えなくなっている場合があります。
地中や構造物の下にあり見えない場合には削岩機やスコップでブロック等の構造物斫(はつ)ったり、穴を掘ったりして境界杭を探します。
専門的な道具や経験が必要な作業ですので自分でやるのは難しい作業です。
斫り=(はつり作業=コンクリートを壊すこと)
削岩機:土地家屋調査士法人えん使用の削岩機
土地家屋調査士法人えん使用のダブルスコップ
皆さんが思っているより深く入っていることもあるので一般の方が探すのは大変な作業となりますので土地家屋調査士に依頼するのがいいと思います。
なぜ土地家屋調査士に依頼するのがいいのかと言うと、ブロック塀等の構造物を斫(はつ)ったり、穴を掘って探してもそもそも最初から入っていない場合や抜けてしまっている場合もあるからです。
このような場合は①②で解説したように境界確定をしなければならないからです。
下の写真は地中に埋まっていた御影石(境界杭の種類の一つ)です。
地表より50cmくらい埋まっていました。
(近景写真)
(遠景写真)
2 境界杭が見つからない時は土地家屋調査士に相談してください。
境界杭を勝手に抜いたり移動したり壊した場合には刑法により罰せられます。
境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
境界確定をする場合は、きちんと測量を行い資料に基づき計算し境界を特定します。
特定した境界をお隣の方と確認をして境界杭を設置します。
境界確定の詳細が知りたい方は「土地の価値を高めるための境界確定のすすめ」をご参照ください。
3 まとめ
境界杭が見つからない場合は次の3つです。
①最初から境界杭が設置されていなかった場合
②ブロック工事や水道工事等で抜けてしまった場合
③地中や構造物の下にあり見えない場合
③のように地中や構造物の下にあり見つからない場合は構造物を斫(はつ)ったり、穴を掘ったりして探し出すことができますが、最初から設置されていない場合や何らかの事情で抜けてしまった場合などは土地家屋調査士により境界を特定した後に設置することになります。
境界杭はあるのが当たり前ではありません。
「杭を残して悔いを残さず」と言います。
ご自分の土地に境界標があるのか、ないのかを確認して見つからなければ土地家屋調査士に相談してみるのがいいと思います。
この記事が皆さんの大切な不動産(土地・建物)を安心・安全な価値にする一助になれば幸いです。