境界を示す杭とは?境界杭について知っておきたいことを徹底解説! 

境界を示す杭が無い場合、どうすれば良いのでしょうか。 境界がハッキリしていないと将来、境界トラブルになるかもしれず心配ですね・・・

安心して下さい!
境界杭が無い場合でも、隣地の所有者など関係者と境界確認をすれば境界杭は設置することができます。境界杭が破損している場合や境界杭が無いことは、実は境界を改めて確認するとても良い機会であり、境界杭を設置することのメリットはたくさんあります。

今回は主に土地の売買や分筆などをする際に必要となる境界杭について、土地境界の専門家である土地家屋調査士が徹底解説します!境界杭の持つ役割を正しく理解し、この機会にあなたの土地のすべての境界点に境界杭(標)が設置されているかを確認し、大事な財産であるご所有地の保全にお役立て下さい。

1 境界杭(きょうかいぐい)とは    

境界杭とは、土地と土地の境目に存在するものの、目には見えない境界線を現地において示すための目印として設置される杭のことです。   

1-1 境界杭の役割・意義

境界杭が持つ大きな役割は、目には見えない土地と土地との境(筆界)を現地においてはっきりと示すことです。
また、境界杭を設置し隣地との境界をはっきりさせておくことで、境界トラブルを未然に防ぐことができます。 

そんな大事な役割をもつ境界杭ですが、必ずしも全ての土地の全ての境界点に設置されている訳ではありません。 

しかしながら、近年の土地売買の際にはその土地の全ての境界点に境界杭が設置されていることが取引条件となっているケースがほとんどです。

現地において境界点を明示するために境界杭が必要となるのは、以下のようなケースです。
・土地の売買
・分筆登記の申請(1つの土地として記録されている土地を2つ以上に分割)
・地積更正登記の申請(法務局(登記所)において記録されているその土地の面積を
実際に測量した結果の面積に訂正する)

1-2 境界杭としての条件

境界杭としてどのようなものをどのように設置すべきかを規定した法律はありませんが、
土地境界の目印として重要な役割を持つ境界杭ですから、不動性・永続性・視認性に優れたものである必要があります。

①不動性:簡単に動いてしまわないこと
②永続性:簡単に壊れたり、腐食しないこと
③視認性:境界点がどこなのか分かりやすいこと、見つけやすいこと

1-3 境界杭の種類

上記条件を兼ね備える境界杭としては、次のものがあります。

狭義の境界杭としては、コンクリート杭・石杭・プラスチック杭があります。木杭は、永続性に欠けるため境界杭としては使用できません。
広義の境界杭としては、上記のものに加え金属標・鋲・刻みがあります。それらを総称して境界標(きょうかいひょう)と言われたりもします。
※以下、本記事における境界杭は、広義での境界杭(標)のことを指します

(コンクリート杭)

(石杭)

(プラスチック杭)

(金属標)

(鋲)

(刻み)

※ 境界杭の種類について詳しくは、【「境界標の種類」を徹底解説!これであなたも境界標通!】をご覧ください。

1-4 境界杭の見方

コンクリート杭や石杭・プラスチック杭・金属標には、頭部にクボミや十字または矢印の溝があり、それにより境界点を特定しています。

(各境界杭における境界点の位置)
                       
この他に境界点ではなく、境界線の方向を示すマイナス杭(方向杭)もあります。
※境界杭の見方について詳しくは、【「境界標の種類」を徹底解説!これであなたも境界標通!】【敷地で境界杭を見つけた方、必読!一目で分かる境界杭の見方】をご覧ください。

1-4 境界杭の探し方

境界杭がなかったら境界杭を探してみましょう。 境界杭の探し方にもちょっとしたコツがあります。 

「自分の土地の境界杭が見当たらない。父は見たことがあると言っているが…」

土や草・落ち葉等が堆積し、境界杭が埋まってしまい見えなくなっていることがよくあります。やみくもに掘ってみても庭を穴だらけにしてしまうだけかもしれません。

①まずは、以前に自身の土地の測量をしたことがあれば、その時の図面を探しましょう。自宅に図面がなければ、最寄りの法務局の支局・出張所(登記所)で地積測量図がないか調べましょう。前の所有者が測量した時のものやお隣りさんが測量した時のものがあるかもしれません。
  
(登記所に保管されている地積測量図)

②測量図面や地積測量図には境界点間の距離が記載されているはずです。(昭和40年代の地積測量図にはその記載がないものもあります)他の既存境界杭から図面に記載された距離を測り、境界杭があるであろう位置の目星をつけたら掘ってみます

③図面がない場合、お隣りさんの土地との間にある塀や柵がどちらのものか、あるいは共有のものか両親やお隣りさんに確認してみましょう。

④塀等の所有についてわかる人がいなければ、その塀の反対の端に境界杭がないか確認します。仮に塀の内側に境界杭があれば、見当たらない境界点も塀の内側にある可能性が高いです。

⑤塀の反対の端にも境界杭が見当たらない場合は、控え塀(塀が倒れないための支え)があるか確認します。 控え塀が内側にあれば、その塀はあなたの所有で、その塀の外側に境界杭がある可能性が高いです。
        
(ブロック塀とその控え塀)

 

2 境界杭の確認

境界杭があるからといって安心はできません。それが正しい位置にあるかの確認が必要です。

なぜなら、長い年月の間に地震や道路工事・外構工事などにより、正しい境界点からズレてしまっている可能性があるからです。
実際、多くの現場を測量してきた中でも境界杭が正しい位置から大きくズレてしまっていたケースは、決して珍しいものではありません。

今ある境界杭が元々ある境界点からズレていないかの確認は、測量しなければわかりません。 測量データと登記所備え付けの地積測量図や市(区)役所等で管理されている道路境界の図面等を照らし合わせ、検証する必要があります。

3 境界杭の設置費用

境界杭の設置には、測量・お隣りさんとの境界立会いが必要です。 それらは、土地の境界についての専門家である土地家屋調査士が行います。
設置にかかる費用の概算については、次のとおりです。

境界杭設置位置の根拠となる地積測量図等の図面がない、もしくはあったとしても作成が古いものは境界点の座標値が記載されていません。 
その場合は、敷地全体を測量しお隣りさんと境界立会いを行う確定測量(※)をしておいた方がより安心です。

※確定測量について詳しくは、【土地の価値を高めるための境界確定のすすめ】をご覧ください。

3-1 境界杭が無い場合

杭がない箇所について、新たに境界杭を設置することはできますが、独断ではできません。将来のトラブルの元になりかねませんので、きちんと測量をし、その境界点に接するお隣りさんと立会った上で、設置しましょう。

そしてこの機会に立会ってもらったお隣りさんと、境界についての覚えとなる「筆界確認書」の取り交わしまでしておくと安心です。

 3-2 境界杭が破損している場合

境界杭らしきものがあるが、頭部分が破損・風化していて境界点の特定ができないことがあります。 
永続性のある境界杭が破損するほどの力が加わっていれば、杭自体が本来の位置からズレている可能性が高いです。
仮に位置がズレていなかったとしても、境界杭の復元にはやはりお隣りさんとの立会いが必要であり、筆界確認書の取り交わしまでしておいた方が良いでしょう。

ちなみに、設置されている境界標を無断で壊したり、撤去したり、別の場所に移動させたりして故意的に境界をわからなくした者には、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられます。(境界損壊罪) 
境界杭は、現地において土地境界の目印となり、境界調査の際にとても重要な物証となり得ることから、その存在を保護するために厳しい処罰規定が設けられています。

4 境界杭について相談できる専門家

境界杭の設置には、境界に関する資料を収集し、それを精査し、測量機械を用いてミリ単位の調整をします。 専門的な知識と技術が必要となりますので、境界杭設置を含む境界に関する相談は、土地境界についての専門家である土地家屋調査士にしましょう。

「塀の積み替え工事で境界杭が取れてしまったので、復元してほしい」
「道路工事で道路の際の境界杭が動いていないか心配」
「相続の時に子供が困らないよう境界杭が全部あるか確認しておきたい」 など

あなたの土地を安心安全な資産にするためには、境界杭はとても大切なものです。
境界杭を適切に設置するためには、土地家屋調査士に依頼して確定測量を行うことで正しい境界点を確認する必要があります。

5. まとめ

境界杭の役割 = 目には見えない土地と土地との境(筆界)を現地においてはっきりと示すこと。
境界杭設置の意義 = 現地において境界をはっきりと示すことで、境界トラブルを未然に防ぎ、土地の売買や相続の際にスムーズに手続きを進められること。

上記の役割を持つ境界杭は、正しい位置になければ意味がないどころか、境界トラブルの元となりかねません。

この機会に是非一度、ご自分の土地に下記境界杭のいずれかがちゃんと設置されているかチェックしてみて下さい。
 

境 界 杭 (標)

・コンクリート杭
・金属標
・石杭
・プラスチック杭
・鋲

1カ所でも境界杭がない、境界杭が正しい位置にあるか心配な方は、土地家屋調査士に相談しましょう。
現地に境界杭を設置した上で、地積更正登記を申請し登記所に地積測量図を提出しておけば、土地の売買や相続の時に慌てずに済みます。事前に準備しておくことをおすすめします。

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