土地家屋調査士の法人・・・・・?
土地家屋調査士って小さいプレハブみたいなところで2~3人でやっている人じゃないの。
普通の事務所とは違うの。
などと思われて検索されたのではないでしょうか?
土地家屋調査士という資格の存在を多くの方が知らないのが現状ですので、土地家屋調査士法人を知らなくて当然だと思います。
もっと我々が頑張って啓蒙活動をやらなければいけませんね!
土地家屋調査士法人は土地家屋調査士が二人以上集まって法人化した組織です。
(現在は法改正によって土地家屋調査士が一人で法人化できるようになりました。)
昔は受験人数が1万人以上いましたが、現在は4千人まで減っており、高齢化が進んでいるのが現状です。
このような状況の中、二人以上集まって法人化することは、非常に意味のあることです。
・ずっと頼んでいた土地家屋調査士がやめてしまった。
土地家屋調査士も人間なので年は取ります。
このような場合でも法人であれば安心できます。
記事内で「土地家屋調査士法人と個人事務所」を徹底比較しています。
記事を読み終わった後は、土地家屋調査士法人と個人事務所の違いについて理解ができ、安心してご依頼いただけると思います。
最後まで読んでいただければ幸いです。
1 土地家屋調査士法人とは
土地家屋調査士法人とは、個人事務所である土地家屋調査士が「法人成り」したものです。
平成15年に改正された土地家屋調査士法以前は、土地家屋調査士法人という言葉はなく、個人事務所だけでした。
平成15年の法改正によって土地家屋調査士が2名以上で法人化できるようになりました。
そして、令和2年の法改正で一人で法人化することができるようになりました。
次章で法人と個人事務所を土地家屋調査士の対話形式で比較します。
2 法人と個人事務所の比較(土地家屋調査士による対話)
土地家屋調査士法人と個人事務所は出来る業務内容は変わりません。
土地家屋調査士の業務は土地家屋調査士法第3条で規定されていて、それ以外の業務を行うことはできません。
法人だからと言って、特別にできる業務はありません。
土地家屋調査士法第3条
調査士は、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
1,不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量
2,不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続についての代理
3,不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続について法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第五号において同じ。)の作成
4,筆界特定の手続(不動産登記法第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。次号において同じ。)についての代理
5,筆界特定の手続について法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録の作成
6,前各号に掲げる事務についての相談
7,土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続(民間事業者が、紛争の当事者が和解をすることができる民事上の紛争について、紛争の当事者双方からの依頼を受け、当該紛争の当事者との間の契約に基づき、和解の仲介を行う裁判外紛争解決手続(訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続をいう。)をいう。)であつて当該紛争の解決の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として法務大臣が指定するものが行うものについての代理
8,前号に掲げる事務についての相談
令和2年の法改正前は、二人以上の土地家屋調査士がいて初めて法人化できましたが、
現在は、一人からでも法人化できますので個人事務所と何も変わらないというのが実際のところです。
では、法人と個人はどう違うのか?
土地家屋調査士法人えんの土地家屋調査士4人が対話してみました。
実際の土地家屋調査士は、法人をどう考えているのかを対話形式で紹介していますので一読してみてください。
対話参加者
土地家屋調査士法人えん 土地家屋調査士:小山・川本・平沼・脇谷
(小山)
(川本)
(平沼)
(脇谷)
小山:「土地家屋調査士法人」というキーワードで記事を作成するのに皆さんに土地家屋調査士法人と個人事務所について色々と聞かせてください。
小山:令和2年に法改正で一人法人が設立可能になって個人事務所との違いがなくなったように思いますが、実際の違いはなんでしょうか?
川本:一人法人が可能になったと言っても、一人で法人化する人は少ないと思います。
一人法人化するメリットはお客様にというより事務所の社員にあるのではないでしょうか?
社会保険や厚生年金への加入といった意味で・・・。
脇谷:私もそう思います。
一人法人化しても実際は個人事務所と変わらない訳ですからお客様へのメリットは少ないと思います。
小山:ありがとうございます。
では、法人と個人事務所の違いについても意見をお聞かせください。
平沼:先ほどの話と同じですが法人のメリットは本職の人数が多数いるところだと思います。
実際の実務でもありますが、境界の復元方法で悩んだときなどでも自分のほかにも本職がいるので相談することも可能です。
脇谷:私も同意見です。
我々は、お客様の大切な財産界を特定していく非常に重要な業務を行っていますので間違えることは許されません。
自分のほかにも本職いるのは安心できます。
川本:境界の立会いなどでどうしても都合がつかない場合でも本職が複数いれば対応も可能ですので、そういう意味でもいいですね。
小山:私も皆さんと同じ意見です。
周りに仲間がいるのは安心です。
人間なので体調が悪いときもありますし、どうしても休まなくてならないときなどの場合でもお客様に迷惑をかけずにすむのがいいです。
川本:先日も、ずっとお願いしていた土地家屋調査士が年齢を原因に廃業してしまったのでやってもらえますという相談がありました。
平沼:土地家屋調査士も高齢化が進んでいるので今後もこのような相談があるんでしょうね。
脇谷:そういう意味では法人は安心ですね。
世代交代がうまく進めばですが。
小山:補助者の育成が鍵ですね。
小山:その他、個人事務所との違いは何かありますか?
川本:同じ法人の仲間ですが、ライバルというのもあります。
ほかの本職より能力が劣ると思われたくないので自己研鑽は怠れません。
平沼:確かに、それはありますね。
誰にも負けたくないです。
脇谷:同感です。
小山:本職が、自己研鑽をしていれば補助者もさぼるわけにはいきません。
事務所全体が、良い雰囲気になりますよね。
小山:一人だと業務をこなすだけで終わってしまいますが、複数の本職がいることによって新しいテクノロジー(ドローンや3Dスキャナー)などもやっていこうとなります。
川本:はい、すごくいいと思っています。
でも、テクノロジーは法人化したからではなく小山代表が好きなだけでは(笑)
平沼・脇谷:確かに(笑)
小山:ですね。
小山:忙しい中、お時間割いていただきありがとうございました。
土地家屋調査士法人えんからもっと多くの仲間を輩出して、もっとお客様の期待に応えられるような事務所にしていきたいと考えています。
どうぞよろしくお願いします。
3 まとめ
土地家屋調査士法人と個人事務所の業務の違いはありません。
法人にしても個人にしても土地家屋調査士法第3条の業務内容が業務となります。
法人、個人それぞれ良い面もあれば悪い面もあります。
特に法人は人数が多くなれば「会社」という色が濃くなって、事務所の代表は「実務家」から「経営者」になってしまいます。
こうなっていくとお客様目線ではなくなり、売上や利益が中心となってしまいます。
土地家屋調査士法人は一般の会社とは大きく異なります。
「法人化」=「専門家集団」にならなければいけないと思います。
この記事を執筆して、改めて土地家屋調査士法人の意味を考えました。
我々は「専門家集団」になりお客様のご期待に応えられるように日々研鑽していきます。