土地の境界立会いを拒否されて困っている方に土地家屋調査士である私が実際にお隣の方に境界の立会いを拒否された実例と解決方法をお伝えします。
この記事では、実際の解決方法でだけではなく、他の方法もわかりやすく解説しています。
現在、不動産の売買では土地の境界が確定されていることが条件になるケースが多いです。
これは考えてみれば当たり前の話で、購入後にお隣の方と境界問題で揉めるのは誰だって嫌ですからね。
このような問題を防ぐために我々土地家屋調査士が土地の境界確定測量を行い境界標を明示します。
土地境界確定のやり方は、現地を細かく測量をして、法務局や官公署に保管されている様々な資料を参考に境界の位置を計算で出していきます。
土地家屋調査士は、土地家屋調査士法第1条で土地の筆界の専門家と位置付けられており、正しい境界の位置を特定する技術と知識があります。
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上に資することを使命とする。
しかし、我々がどれだけ正しい境界の位置を特定してもお隣の方が境界の立会いを拒否されたのでは境界は確定には至りません。
今回の記事は、まさしくこのパターンです。
結論は、無事売買ができ、所有者の方に大変喜んでいただきました。
実例でわかりやすく解説していますので、最後まで読んでいただければ幸いです。
1、(実例)お隣に土地境界の立会いを拒否された
(実例)
埼玉県〇〇市の実家の土地を相続したが、
私自身都内にマンションを購入しているため相続した実家を売却するため不動産会社にお願いしたら土地の境界確定測量が必要だと言われた。
売却に必要な土地の境界確定測量をお願いしたいという依頼内容です。
土地境界確定する土地は、昭和60年代に分譲された土地で法務局に地積測量図が備え付けられています。
測量結果も地積測量図と概ね合っており境界に問題はない土地でした。
土地境界確定測量は、下記のようなフローで行います。
①相談
↓
②見積り
↓
③依頼
↓
④資料調査
↓
⑤現地調査・測量
↓
⑥計算
↓
⑦仮のポイントの設置
↓
⑧境界(筆界)立会い
↓
⑨境界標設置
↓
⑩境界(筆界)確認書の取り交わし
↓
⑪成果作成、納品
土地境界確定測量について詳しくお知りになりたい方は、「土地家屋調査士法人えんが行う境界確定を土地家屋調査士が解説!」をご参照ください。
上記でも書きましたが、今回の土地は地積測量図もあり、測量結果も地積測量図とあっており、境界標もきちんと設置されている土地でスムーズに終了すると思われた土地でした。
隣接地の数は、5軒で4軒は境界標と地積測量図を確認してもらい承諾をいただけましたが、残り1軒の所有者が立会いを拒否されたというのが今回の実例です。
我々も年間相当数の土地境界確定測量を行いますが、立会いを拒否される方は少なくはありません。
我々専門家としては、境界線はお隣だけの問題ではなく自分にも関係する事なので絶対に立ち会った方がいいと考えますし、お伝えもしますが応じていただけないケースも多々あります。
今回の事例では、分譲地でほぼ同じ時期に住まわれて、子供の頃から面識のある方でした。
それでも頑なに「境界の立会いはしない」と言われ、最後は連絡も取れなくなってしまいました。
立会い拒否の理由は人それぞれだと思いますが、実際に言われたことは
・先代の人に意地悪をされた
・自宅を修繕するときに協力してくれなかった
・庭木の葉っぱが落ちてくる、枝が越境してくる
他にも多々ありますが、住まわれている時の人間関係が大きく関係していると思います。
このように理由を言ってくれる場合は、所有者の方が過去のことのお詫びをすれば協力してくれるケースも多いです。
しかし、今回の事例のように理由も言わないで「立会いはしない」と言われると我々もどうすることもできないのが現実です。
次章では、実際どのように解決したのかを書いていきます。
2、実際の解決策
今回の事例の解決策は、「土地地積更正登記」です。
土地地積更正登記は、法務局に登記申請を行い、登記が完了すると地積測量図が法務局に備え付けられる登記です。
土地地積更正登記について詳しくお知りになりたい方は、「土地地積更正登記とは?正しい面積に修正して自分の土地を守る方法!」をご参照ください。
法務局に地積測量図が備え付けられるということは、境界が確定されていると考えられますので土地境界確定測量が完了したと言えると思います。
しかし、土地地積更正登記は簡単にできる登記ではなく、原則お隣との境界確認が終わり、筆界確認書を取り交わししていることが前提となります。
今回のケースでは、お隣の一人との立会いが未了で筆界確認書の取交しもできていませんでしたが、分譲の時の地積測量図が法務局にあり、現地が地積測量図とあっていて、境界標もすべて存していたので、事前に法務局の登記官と打合せをして現地調査をしてもらい登記を完了させることができました。
これにより土地の境界が確定し、無事売買をすることができました。
3、その他の解決策
今回の事例のように立会いの拒否をされるケースは少なくありません。
今回は、色々な好条件が重なり「土地地積更正登記」で解決することができましたが、全てが「土地地積更正登記」ができるわけではありません。
その他の解決策としては、下記のようなものが考えられます。
・筆界特定制度
・土地境界確定訴訟(土地家屋調査士の業務でないため弁護士さんにご相談ください。)
筆界特定制度について詳しくお知りになりたい方は、「境界線トラブルもこれで解決!筆界委特定とは?筆特をわかりやすく解説」をご参照ください。
4、まとめ
お隣の方と土地の境界を確認する時に、立会いの拒否をされることは少なくありません。
長い間、お隣に住んでいた訳ですから大小は問わず気分を害することもあると思います。
しかし、現在土地の売却をする場合は土地の境界が確定されていることが条件の場合がほとんどです。
いざ売却をしようと思って土地の境界確定をしようと思ったら、立会い拒否により決まらないという事もあり得ます。
これは売却だけに限らず、相続で兄弟で土地を分ける分筆の登記をする場合も同様です。
備えあれば憂いなしです。
我々は、何かあったときのために土地を売却できたり、分割できたりできるように事前に境界確定測量をやっておく「予防測量」をおススメしています。
予防測量について詳しくお知りになりたい方は、「【予防測量】皆さんの大切な土地を安心・安全な価値にするために!」をご参照ください。
この記事が、皆様の大切な不動産を安心・安全なものにする一助になれば幸いです。