・土地の購入しようと思い物件を見ていたら特約で「境界 非明示」となっていた
「境界 非明示」って何なのだろう?
「境界 非明示」の土地は購入しても大丈夫なんだろうか?
このような状況で「境界 非明示」と検索された方が多いのではないでしょうか?
土地を売却するとき境界を明示することが当然となっています。
当然境界が明確でない土地など購入したくはないですよね!
本来なら土地の財産界を示す境界標は設置させていなければなりませんが、すべての土地に境界があるわけではありません。
境界標がない場合は、様々な資料に基づき境界の位置を特定してお隣の所有者の方と確認をして境界標を設置します。
これが何らかの理由で設置できない状況が「境界 非明示」です。
境界は見えない境界線を見える化する唯一のものであり、お隣との財産界を示す非常に重要なものです。
筆者は、不動産業をやっている訳ではないので、「境界 非明示」の特約について言えることは何もありませんが、土地家屋調査士の立場で境界の必要性、重要性はお伝え出来ます。
この記事では、実務家として境界の明示を行っている土地家屋調査士法人えんが実際に「境界 非明示」となってしまった理由を事例で解説します。
記事を読み終わった後は、境界の明示の重要性がわかり、ご自宅の境界について色々と考えることができると思いますので、最後まで読んでいただければ幸いです。
目次
1 境界の非明示とは
境界非明示とは、何らかの理由で境界標が設置できないことを言います。
つまり、境界がはっきり明示されていない、ということです。
最近の土地の売買では、境界確定測量を行い、土地の境界をハッキリさせてから売買するのが当然となっています。
境界確定測量は、我々土地家屋調査士が、現地を測量した結果と様々な資料を照らし合わせて境界の位置を特定してお隣の所有者の方と境界の位置を確認し、確認した位置に境界標を設置します。
境界確定測量について詳しくお知りになりたい方は、「確定測量とは?なぜ必要なのかについて土地家屋調査士が徹底解説」をご参照ください。
通常であれば、何の問題もなく境界標の設置ができるので、「境界非明示」という状態にはなりません。
しかし、実際には、「境界 非明示」は存在します。
次章では、なぜ境界非明示は存在するのか、境界非明示の3つの理由を解説します。
2 境界非明示の存在と3つの理由
前章の最後でも記載しましたが、実際には「境界 非明示」は存在します。
最近の土地売買では、売買後のトラブルを防ぐ意味で土地家屋調査士が土地境界確定測量を行うケースが多いです。
土地家屋調査士が境界確定測量を行えば正しい境界(筆界)は特定できます。
では、なぜ「境界 非明示」は存在するのでしょうか?
2-1 実際には境界非明示も存在する
土地家屋調査士は現地を測量して様々な資料に基づき境界(筆界)を特定します。
しかし、多くの方がブロックなどで隣と仕切られているのでブロックが境界だと思われていて(それは「所有権の境」であって筆界ではありません。)土地家屋調査士が特定した境界(筆界)の位置に納得されない方もいます。
筆界とは、公法上の線と呼ばれいて、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線であり,所有者同士の合意などによって変更することはできません。
境界(筆界)とは、ものすごく簡単な言い方をすれば、土地ができた時から筆界は決まっていて、お隣と話し合って自分の筆界はここと言うことは言えないということです。
境界について詳しくお知りになりたい方は、「境界線の意味本当に知っていますか?境界の専門家が徹底解説!」をご参照ください。
このような事から、お隣と境界が確認ができなく、「境界非明示」となる場合があります。
売買において、境界の明示義務があるようですが、特約で「境界非明示」とすることもできるようです。
2-2 境界非明示の3つの理由
境界非明示の理由は主に3つあります。
②境界(筆界)が特定できなくて、筆界特定制度で境界(筆界)を特定したケース
③物理的に境界(筆界)が設置できないケース
それぞれのケースを事例で解説します。
①お隣と境界の確認ができなかったケース
「境界非明示」で最も多いのはこのケースです。
最近の土地の売買では、土地境界確定を行うことが主流となっています。
直近で分筆登記された土地や地積更正登記された土地は、法務局に現地復元可能な地積測量図が備え付けられており、境界標の種類も記載されているので境界確定は不要ですが、平成17年以前の地積測量図は備え付けられていても、現地復元ができない図面であったり、境界標の有無も記載されていないものもあります。
図面がなかったり、あっても古い図面の場合の売買は土地境界確定がされることが多いです。
土地境界確定は、土地家屋調査士が現地を測量し、様々な資料に基ついて境界(筆界)を特定します。
境界(筆界)は、公法上の線と呼ばれ土地ができた時から決まっているというのが、境界(筆界)の概念ですが、実務上は、特定した境界(筆界)をお隣の所有者と確認し、双方承認するという形式となっています。
この時にお隣の所有者と確認ができなかった場合は、境界を設置できないため「境界非明示」となります。
②境界(筆界)が特定できなくて、筆界特定制度で境界(筆界)を特定したケース
①のケースで境界が特定できなかった場合やお隣の所有者が見つからないで確認できなかった場合には「筆界特定制度」を使い境界(筆界)を特定したりします。
筆界特定制度は、お隣の承諾なしで筆界特定登記官が筆界を特定する制度ですので境界(筆界)は特定されます。
しかし、この制度で特定した境界(筆界)は、境界標は設置されませんので「境界非明示」となります。
この場合は、どう考えたら良いのかは3章で解説します。
筆界特定制度について詳しくお知りになりたい方は、「境界線トラブルもこれで解決!筆界特定とは?筆特をわかりやすく解説」をご参照ください。
③物理的に境界(筆界)が設置できないケース
このケースは「境界非明示」とは呼ばないことが多いです。
地形の問題や構造物等の問題で、物理的に境界標を設置できないケースがあります。
例えば下記写真のように集水桝の中に境界があるような場合には設置できません。
土地の売買では、このような場合はどうするかはわかりませんが、地積測量図などでは「計算点」という記載で処理します。
直近の地積測量図は「座標」で場所を特定できるので物理的に設置できない場合は「計算点」でも問題ありません。
この場合は、どう考えたら良いのかは3章で解説します。
地積測量図について詳しくお知りになりたい方は、「地積測量図の見方がわかる、作成者である土地家屋調査士が徹底解説」をご参照ください。
3 境界の専門家から見た境界非明示の土地
「境界非明示」の土地の場合は、土地家屋調査士に相談してください。
我々土地家屋調査士は、土地家屋調査士法第1条で「土地の筆界を明らかにする業務の専門家」と規定されています。
土地家屋調査士法第1条
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もつて国民生活の安定と向上に資することを使命とする。
境界の専門家として、「境界非明示」の土地は下記のように考えますので、参考にしていただければと思います。
①お隣と境界の確認ができなかったケース
この場合は、将来境界トラブルに発展する可能性もあると思います。
境界標は、見えない境界線を見える化するものです。
また、境界(筆界線)は、お隣との財産界を示す非常に重要なものです。
「境界 非明示」と言うよりは、「境界未確定」と考えてください。
②境界(筆界)が特定できなくて、筆界特定制度で境界(筆界)を特定したケース
この場合は、境界(筆界)には、問題はありません。
筆界特定制度を利用して筆界が特定された場合、土地全部事項証明書に筆界特定がされた旨が記載されます。
これを嫌がる方もいますが、我々専門家としては、行政のお墨付きをもらったように思います。
筆界特定制度の制度上、境界標の設置はできませんが、「境界非明示」でも安心できます。
③物理的に境界(筆界)が設置できないケース
この場合は、全く問題のない土地です。
我々土地家屋調査士も物理的に境界を設置できない場合は、境界を設置しません。
このような場合でも、境界確定では、お隣の所有者にしっかり説明して境界に位置に関しては承諾いただいています。
4 まとめ
「境界 非明示」について解説してきました。
「境界 非明示」には、主に3つのケースがあります。
①お隣と境界の確認ができなかったケース
②境界(筆界)が特定できなくて、筆界特定制度で境界(筆界)を特定したケース
③物理的に境界(筆界)が設置できないケース
同じ「境界 非明示」でも①は危険、②③は安全です。
土地を購入する場合の条件は様々だと思います。
・金額
・立地
・環境
・その他
購入条件に当てはまった土地でも、将来的なトラブルを避けるためにも境界に関しては境界標はしっかり明示されているのかを確認してください。
これは、境界・筆界に関する記事では、必ずお伝えしていますが、境界はお隣との財産界を示す大切なものです。
この記事が、皆さんの大切な土地を安心・安全な価値にする一助になれば幸いです。