あなたの土地には「境界標」がきちんと設置されていますか?
境界標は、お隣りさんとの境界を示す大事な目印です。ですから、正しい位置にその場所に適したものが適切な方法で設置されていなければなりません。
誤った方法では、設置したはずの境界標が無くなってしまったり、簡単に動いてしまったりする可能性があります。
そうなると境界をハッキリさせるために設置した境界標が、逆にトラブルの元に・・・なんてことにもなりかねません。
そこで、この記事では各種境界標の設置方法や設置費用について、土地家屋調査士が詳しくわかりやすく説明します。
この記事を読んで、あなたの土地にきちんと境界標が設置されているかどうかを点検してみて下さい。
目次
1 境界標を設置する意義
境界標が持つ大きな役割は、目には見えない土地と土地との境(筆界)を現地においてはっきりと示すことです。
「お隣りさんとの境にはブロック塀があるからウチは大丈夫」という認識では危険です。そのブロック塀のどこが境界なのでしょうか。外側?中心?はたまた内側でしょうか?
そもそも境界はブロック塀沿いではない可能性もあります。
その数十センチ、数センチの境界についての認識の誤差が、将来の境界トラブルの芽となりかねません。
また、全ての境界点に境界標を設置しておくことで、土地の売買や相続の際にスムーズに手続きを進められるメリットがあります。
2 【種類別】境界標の設置方法
お隣りさんとの境界を示す境界標には主に次のような種類があり(「境界標 種類」にリンク)、設置する場所に最も適したものを設置します。設置には測量が必要となるため、土地家屋調査士が行います。
① コンクリート杭
② 御影石
③ 金属標
④ 鋲
⑤ プラスチック杭
設置方法もそれぞれ違います。新たに境界標を設置する場合、御影石を用いることはまずありませんので、それ以外のものの設置方法について御紹介します。
2-1 コンクリート杭
不動性・永続性・視認性に優れ、境界標として最も多く使用されています。
一般的な長さは45センチですが、畑の中に設置する場合などは、60センチのものを用いることもあります。
まず、複式スコップ(ダブルスコップ)という特殊な道具を使って、約30センチ四方の穴を掘ります。
設置後に埋まって見えなくならないよう境界標の頭が5~10センチほど出るくらいの深さまで掘ります。
道路際など人が通る場所は、地面と同じ高さになるように設置します。
水平器を用いてコンクリート杭をまっすぐに設置し、固定させるためにセメントを入れます。
土を埋め戻し、測量の機械を使ってミリ単位で位置の微調整を行います。最後に境界点間の距離をチェックして、設置完了です。
2-2 金 属 標
永続性・視認性に優れています。コンクリート杭を設置するだけの物理的スペースがない場合やコンクリートのタタキ上に設置する場合は、アンカー付きの金属標を用います。
ドリルで穴をあけ、セメントと入れてアンカーを打ち込みます。
さらに金属標の周りをセメントで固めることで不動性が備わります。
測量の機械を使ってミリ単位で位置の微調整を行い、境界点間の距離をチェックして、設置完了です。
境界点がブロック塀の中心にあり、地表にコンクリート杭などが設置できない場合は、塀の上にコンクリート用のボンドを使って金属標を設置します。コンクリート杭やアンカー付きの金属標ほどの不動性はありませんが、塀の上なので、猫が踏んだぐらいでは取れません。
2-3 鋲
永続性に優れています。
道路などのアスファルトに直接打ち込まれたものは、車両の往来により少しずつ位置がずれる可能性があります。
頭の直径が、大きいものでも1センチほどなので、少し見つけにくいかもしれません。
コンクリートのタタキの上にドリルで穴をあけて周りをセメントで固めることで不動性が備わります。
測量の機械を使ってミリ単位で位置の微調整を行い、境界点間の距離をチェックして、設置完了です。
2-4 プラスチック杭
視認性に優れています。土が掘れずコンクリート杭が設置できないところにハンマーで打ち込んで使用します。周りをセメントで固めれば不動性を備えますが、コンクリート杭や金属標・鋲ほどの永続性がないため、それらが設置されるまでの仮の杭として用いることもあります。
3 境界標設置の依頼と費用
位置がずれないように、より高い不動性を境界標に持たせるには深い穴を掘ったり、セメントを練ったりとそれなりの手間がかかります。 正確に設置するために測量も必要です。境界標の設置は、土地家屋調査士にお任せください。設置費用は設置する境界標に応じて変わります。 それそれの境界標の設置費用の目安をまとめました。
境界標の設置費用
※ 境界点が明確な場合で境界標の設置作業のみの概算費用です。この他、広範囲の測量や隣接地所有者との立会いが必要な場合は、別途費用がかかります。 正確な費用をお調べになりたい方は、一度土地家屋調査士に御相談下さい。
尚、境界標設置等の費用については、民法に規定があります。
民法 第223条
土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
民法 第224条
境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量
の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。
実情は、敷地の売買等により境界標設置の必要が生じ、それを申し出た方が設置に伴う費用を負担するケースがほとんどです。
4 境界標を設置するときの注意点
土地と土地との境界を示す境界標の設置にあたっては、次のような注意点があります。
・ 正しい位置に設置する。
・ 設置個所に最も適したものを適切な方法で設置する。
・ 他人の土地との境界点に設置する場合は、立会い・承諾が必要。
4-1 正しい位置に設置する
隣りの土地との境界を示す目印ですから、正しい位置に設置しなければ意味がありません。正しい位置に設置するには、必要な範囲を測量し、測量データと境界についての資料と照らし合わせるなど専門的な知識と技術が必要となります。
境界標自体はホームセンターで売られていることもありますが、測量機械や境界資料を見ずに自分で設置することは、後の境界トラブルの元になりかねないので、絶対におすすめできません。
正しい位置がわからない場合は、土地家屋調査士に相談してみるとよいでしょう。
4-2 設置個所に最も適したものを適切な方法で設置する
せっかく測量の機械でミリ単位の調整をし設置した境界標でも適切な方法で設置されていなければ、すぐにズレたり取れてしまったりする可能性があります。
例えば…
車の乗り入れが多い駐車場部分に境界点がある場合、貼り付けタイプの金属標は適しません。 コンクリート杭か地表部分の表面積が少ない鋲が良いでしょう。
畑の中や軟弱な地盤に境界標を設置する場合は、一般的な45センチのコンクリート杭ではなく60センチのものを使用することで、不動性が増します。
高さが1.2メートルを超える万年塀や明らかに傾いたブロック塀の上に金属標を設置することはおすすめできませんが、塀の基礎部分に穴をあける承諾が得られず、やむを得ず塀の上に設置することもあります。
この場合に限りませんが、一度測量をした境界点にはⅩYの座標値を持たせることで、境界点間の長さや敷地の面積を算出しております。 敷地の測量をした際には、境界点の座標値が記載された図面を作成してもらい、権利証などと一緒に保管しておくと良いでしょう。万一、境界標が無くなってしまった時の復元や設置してある境界標がズレていないかの確認をする際に、大事な資料となります。
(座標値が記載された図面)
4-3 他人の土地との境界点に設置する場合は、立会い・承諾が必要
境界標を設置しようとする箇所が他人の土地との境界点である場合は、その土地の所有者との立会いをし、境界標設置についての承諾が必要となります。確定図や地積測量図など座標値が記載された図面があるからといって、勝手に境界標を設置することはできません。(境界確定訴訟による確定判決がある場合を除きます)
5 まとめ
最後に境界標が持つ大事な役割をまとめました。
・自分の土地の範囲がどこまでなのか、現地において一目瞭然である。
・境界トラブルを未然に防ぐことができる。
・土地の売買や相続の際の手続きがスムーズにできる。
現地に境界標を設置した上で、境界点の座標値が記載された図面を備えておくことで、あなたの大切な財産である土地を保全することができます。
道路の舗装やり替えやブロック塀の積み替えなど、工事の際に境界標が無くなってしまうケースが圧倒的に多いです。 それらの工事にあたり業者さんが挨拶に来た時は、「ここに境界標があるので、気を付けて下さい。」と一言伝えておきましょう。
敷地の端にある境界標を普段はあまり気にもかけないかもしれません。 掃除や庭の手入れの際に境界標が無くなっていないか、ぐらつきが無いかをたまに確認してみて下さい。
もしその様な状態を発見した時は、お隣りさんと話し合って早めに境界標の再設置をした方が良いでしょう。