売買、賃貸するときに自分の土地が分からない、土地の課税通知書が何枚にも渡っていて読むのも辞めた…そんなことありませんか?出来れば土地をまとめて管理したいですよね。
「合筆」は複数の土地を一つにまとめる方法です。
土地をまとめることで管理が楽になります。また、「合筆」により、土地の価値が増加したり、節税に繋がる可能性があります。
「合筆」の登記、調査の専門家である土地家屋調査士が詳しく説明します。
目次
1 合筆とは
合筆(がっぴつ、ごうひつ)は読んで字の如く、筆(土地)を合わせること、つまりは幾つかの隣接した土地を1つにすることを言います。
また、この合筆を他の人に主張するために公示する登記、これを合筆登記といいます。
土地A・Bを合筆して土地Aにする
2 合筆のメリット
合筆により考えられるメリットは次の通りです。
合筆のメリット
1つずつ見て行きましょう。
2-1 管理が楽になる
合筆により土地の管理が楽になります。複数の土地を一体にすることで目が届きやすくなるからです。
複数の土地を持っていて、いざそのうちの幾つかを売買や賃貸するとなったらどれがどの土地か分からなくなってしまいますよね。
隣接した土地を合筆しておけば、契約書に記載する対象の土地をすぐに把握出来るようになります。また、何枚にも渡っていた課税通知書も見易くなります。
2-2 節税出来る可能性がある
合筆により「住宅用地」に該当すると固定資産税の負担が減ります。
固定資産税評価額の5/6(200㎡を超える場合は2/3)を減額する特例が適用されるためです。
「住宅用地」とは、居住用家屋の敷地である土地で、居住用家屋の総床面積の10倍までの土地などが該当します。
居住用家屋の敷地の一部として利用されている土地を合筆することで、この特例が適用される面積が増える可能性があります。
(地法349の3の2)
2-3 土地の価値が増加する可能性がある
合筆により整った土地の形状にすることでその価値が増加します。
土地の形状が細長かったり、曲がりくねっていると使い道が限定されますよね。そのような土地は、合筆により隣接する土地と合わせることで整った土地の形状にすることが出来ます。整った土地になることで、土地の用途が拡がり土地の価値増加が期待されます。
具体例で言うと・・・道路に接している土地(使い勝手が良い)とその裏側の接していない土地(使い勝手が悪い)では、前者の方が不動産価値が高いですが、裏側の土地と合筆することで接道している土地の面積は広がるので相乗的に不動産価値が上がります。
2-4 分筆する土地を整理出来る
分筆をするときに合筆を行うと土地の形状を整えることが出来ます。
また、合筆と分筆を同時に行うことで登録免許税の節約に繋がります。
合筆と分筆の関係として、一度合筆して形状を整えてから分筆するケースと、分筆してから利用する単位で合筆するケース(同時に申請する場合は分合筆と言い、分合筆前後の土地の個数が不変であることが必要です)があります。
後者の特に分合筆の場合は、合筆と分筆を別々に行うのに比べ、登録免許税を安く抑えることが出来ます。次のケース(土地Aを土地A,Cに分筆、その後に土地B,Cを合筆)ですと、合計3,000円の登録免許税が掛かりますが、分合筆の場合は分合筆前後の土地の個数が2つのため2,000円となります。
土地Aを土地A,Cに分筆、その後に土地B,Cを合筆
3 合筆は専門家に依頼すべき
次の理由から、「合筆」の登記・調査の専門家である土地家屋調査士に依頼すべきでしょう。
専門家に依頼すべき理由
3-1 大事な土地の権利書を取り扱うため
大事な土地の権利書を取り扱うため、専門家に依頼をすべきです。というのも、所有権の登記のある土地の合筆には土地の権利証が必要ですが、これは土地の所有者であることを証明する重要な書類になります。信頼出来る専門家に任せましょう。
3-2 申請適格者かどうかの本人確認をしっかり行うため
申請適格者かどうかの本人確認をしっかり行うため、専門家に依頼をすべきです。というのも、申請人となる者は決められており、異なる者からの申請は却下されます。却下がされないよう適格な申請人であるか専門家に確認してもらいましょう。
3-3 合筆が制限される土地か判断を行うため
合筆が制限される土地か判断を行うため、専門家に依頼をすべきです。というのも、土地の内容や権利関係によっては合筆が出来ないことがあり、根拠に基づいた判断が必要です。合筆可能か専門家に判断してもらいましょう。
俗にいう土地の権利証とは登記識別情報のことです。
(不登法の改正のあったH17.3.7より前は登記済証と言われる書類です、今も有効であり土地の権利証としての役割を果たしています)
所有権の登記のある土地の合筆登記により新たな「登記識別情報」が発行されます。登記識別情報は土地の権利証として重要な情報ですので受け取る方の本人確認が必要です。この本人確認に用いられるのが、申請人が手元で保管している「登記識別情報」です。
このように発行(新規)と提供(既存)として土地の権利証のやり取りが生じるため、信頼することのできる専門家に任せるべきでしょう。
専門家に依頼すべき理由の合筆の制限(合併制限)については次で説明します。
4 合筆が出来ないケース
メリットの多い合筆ですが、出来ないケース(合併制限)があります。順を追って押さえていきましょう。
① 相互に接続していない土地
当然ですが合筆する土地が隣接していないと出来ません。
② 地目又は地番区域が相互に異なる土地
合筆する土地は地目(土地の用途 以下、地目)が同じであること、地番の直前の地番区域が同じであることが必要です。
③ 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地
合筆時点の登記上の持主が同じであることが必要です。
④ 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地
合筆時点の登記上の所有割合が同じであることが必要です。
⑤ 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地
土地の最初の登記である表題登記のみでは「表題部所有者」、その後所有権の登記まで行うと「所有権の登記名義人」となります。前者は所有権の登記がない土地、後者は所有権の登記のある土地です。合筆する土地は所有権の登記のない土地同士、または所有権の登記のある土地同士である必要があります。
⑥ 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(例外あり)
抵当権の登記など所有権の登記以外の登記が付いている土地は合筆が出来ません。ただし、その登記の目的によっては一定要件を満たすことで合筆が可能です。
(例:抵当権等の担保権の登記については、登記の目的、申請の受付年月日、受付番号、登記原因及びその日付が同一であれば合筆が可能)
(以上、不登法41①一~六)
合筆が出来ないケース
このように合筆が出来ないケースがあるため、判断を誤らないためにも専門家に依頼した方が良いでしょう。
判断を誤ると申請内容の修正が必要となり、合筆後に売却等の契約や他の登記を予定している場合には、その日程に遅れが生じるリスクがあります。
5 合筆の費用・期間
合筆登記に掛かる費用
報酬
2筆(土地の単位、以下 筆)を合筆して1筆にする場合は一般的に概ね5万円程度です。
1筆増えるごとに概ね2万円程度ずつプラスされます。
(例:合筆により4筆を1筆にする 5万+2万×2→9万円程度)
登録免許税
上記のケースですといずれも合筆後は1筆ですので1,000円です。
合筆登記に掛かる期間
土地の地目の確認など現地調査完了までは概ね1週間以内です。
(申請者は必要書類を準備します 印鑑証明書、登記識別情報等)
必要書類が整い、また現地調査が完了すれば、そこから申請書類を作成し登記申請を行います。申請から完了までは、概ね1週間~10日です。
(法務局の混雑具合によっては前後)
6 合筆の手続き
合筆の流れを図にすると次のようになります。
合筆の流れ
① 土地家屋調査士法人等に依頼
土地の権利証を扱う登記であり、また合筆の制限の判断が煩雑なため、「合筆」の登記・調査の専門家である土地家屋調査士に依頼しましょう。
② どのように合筆するかについての打ち合わせ
合筆の対象土地の資料収集を行い、また合筆の制限に掛からないか現地調査も踏まえて判断を行います。申請者は、登記識別情報等の必要書類を準備します。
③ 土地合筆登記を申請
登記のための申請情報を作成し、必要書類を添付します。また登記所備え付けの地図上どの土地が1つになるかを示した地形図も作成します。そして申請を行います。
④ 合筆が完了する
成果は登記完了証、全部事項証明書、登記識別情報(所有権の登記のある土地の場合)です。
合筆を行うと次のように登記上公示されます。
次の例示では、合筆により6つの土地を1つの土地としてその後管理をすることが出来ます。(158番6,158番15, 158番16, 158番17, 158番28, 158番29→158番6)
合筆する土地(存続)
合筆される土地の1つ(閉鎖)
7 合筆の必要書類
必要書類は、下記の通りです。
・申請情報
申請者が誰か(代理は誰か)、どの土地とどの土地を合筆するのかなど記載します。
・委任状
申請について代理(土地家屋調査士等)をお願いする場合に作成します。押印は実印です。
・地形図
合筆後の地図(公図)を示した図面になります。*法定添付書面ではありません。実務上提供しています。
・登記識別情報(または登記済証)※
土地の権利証として付与されている文字情報です。合筆する土地のいずれか1つのもので結構です。
・印鑑証明書※
委任状に押印した実印の印鑑証明書です。
※は所有権の登記のある土地の合筆で必要となります。
このほか、相続があった場合の相続人からの申請などのケースでは、他にも書類が必要となりますので、合筆を実行する際には信頼できる専門家に相談しましょう。
8 まとめ
今回は土地の管理が楽になる合筆について書き出してみました。管理が楽になる以外にもメリットがありますので、この記事でその手段の一つとして「合筆」を覚えて頂けましたら幸いです。
合筆のメリット
また、合筆が出来ないケースがあります。
合筆が出来ないケース
不安があれば、専門家の土地家屋調査士に相談しましょう。
専門家に依頼すべき理由