建物の建築や何らかの事情で測量を依頼した業者から『地積測量図がない土地なので確定測量が必要だ』と言われ、 “なぜ地積測量図がないのか” を調べたくて検索されたのではないでしょうか?
地積測量図は、法務局に備え付けられている図面ですが、すべての土地に地積測量図があるわけではありません。
地積測量図は、土地を分割する土地分筆登記や土地の面積を正しくする土地地積更正登記等を申請しなければ法務局には備え付けられません。
また、分筆登記された土地でも土地台帳と登記簿を一元化する前の図面は法務局にはありません。
地積測量図は、土地の境界(筆界)を表す重要な図面であり、境界が亡失してしまった場合には境界の復元の根拠になる図面です。
では、どうすれば地積測量図がない土地から、地積測量図がある土地にできるのかを境界の専門家である土地家屋調査士がわかりやすく解説します。
1 地積測量図がない理由
すべての土地に地積測量図はあるわけではありません。
地積測量図は、登記申請の添付図面であり、土地を分割する土地分筆登記や土地の面積を正しくする土地地積更正等の申請によって法務局に備え付けられます。
従って、これらの登記申請がされたことのない土地に地積測量図はありません。法務局に地積測量図が備え付けられる場合は次の3つです。
【法務局に地積測量図が備え付けられる3つのケース】
①土地分筆登記が申請された場合
②土地地積更正登記が申請された場合
③土地表題登記が申請された場合
①土地分筆登記が申請された場合
土地を数個の土地に分割する登記を「土地分筆登記」と言います。
土地分筆登記を申請するには地積測量図を添付して申請し、登記完了後に法務局に地積測量図が備え付けられます。
分筆登記の詳細は「分筆とは?安全確実な登記方法について土地家屋調査士が徹底解説!」をご参照ください。
②土地地積更正登記が申請された場合
土地の面積が登記された時から間違っていた場合に正しい面積にする登記を「土地地積更正登記」と言います。
土地地積更正登記を申請するには地積測量図を添付して申請し、登記完了後に法務局に地積測量図が備え付けられます。
③土地表題登記が申請された場合
地番のない土地に地番を付す場合に登記を「土地表題登記」と言います。
土地表題登記を申請するには地積測量図を添付して申請し、登記完了後に法務局に地積測量図が備え付けられます。
コラム
昔、親から土地をもらって家を建てたという方で大きい土地の一部を分割してもらったという場合も地積測量図はありません。
表示に関する登記が創設されたのは昭和35年の不動産登記法の改正によってですのでそれ以前の地積測量図は存在しません。
2 地積測量図がないメリット・デメリット
地積測量図がないメリットは一つもありません。
反面デメリットは、3つあります。
①境界標がなくなった場合、復元ができない。
②売却する際に土地境界確定が必要となり売却に時間がかかる。
③地震や災害があった場合、登記簿記載の面積で判断される可能性がある。
①境界標がなくなった場合、復元ができない。
平成17年に不動産登記法の改正があり、不動産登記規則第77条で地積測量図の作成は基本三角点等に基づく測量により筆界点の座標値を記載することになり現地復元性が高まりました。
地積測量図のない土地や平成17年以前の土地は境界標が亡失してしまっても復元という形で境界標を元の位置に戻すのが難しく境界(筆界)を特定する境界(筆界)確定が必要となります。
境界(筆界)の復元の詳細は、「見えない境界を見える化する、境界標復元とは何か?徹底解説!」をご参照ください。
境界(筆界)の確定の詳細は、「土地の価値を高めるための境界確定のすすめ」をご参照ください。
②売却する際に土地境界確定が必要となり売却に時間がかかる。
相続や何らかの事情で土地を売却する場合、境界(筆界)の確定がされていることが条件になることが多いです。
このような場合、土地境界確定測量を行いますが、一般の住宅の広さ(100㎡~200㎡)の土地でも公道と面していて公道が確定済みの場合でも1ヵ月半~2ヵ月、公道が未確定の場合では3ヵ月~4ヵ月かかります。
この期間、売却が遅れてしまいます。
土地境界(筆界)確定測量の詳細は、「確定測量とは?なぜ必要なのかについて土地家屋調査士が徹底解説」をご参照ください。
③地震や災害があった場合、登記簿記載の面積で判断される可能性がある。
地震や災害で土地の一部が土砂崩れなどで崩れてしまった時、自分の土地の位置を特定するためには地積測量図が有効となります。
地積測量がない場合は、登記簿に記載された面積(地積)で特定される可能性があり、実際の面積が200㎡あるのに登記簿には160㎡と記載されていた場合、160㎡で特定されてしまう可能性があります。
多くの方が自分の土地の面積(地積)は登記されているから大丈夫と思われています。
それぞれの土地には登記簿(全部事項証明書)が存在し、そこには土地の所在・地番・地目・地積が記載されています。
確かに直近で分筆登記がされた土地や地積更正登記のされた土地は正しい面積ですが、登記簿が作成された時から土地の分割等を行なっていない土地の場合には正しい面積とは言えないことがあります。
なぜ違うのかですが、そもそも登記簿が作成された時に記載された面積は明治時代の地租改正の際の面積がそのまま使われているからです。
現在と比べて測量機器や測量技術は劣りますし(縄で測っていた)、課税を低くするために過小申告がされていたとも言われています。
地積測量図のある土地は、土地を分割する土地分筆登記や土地の面積を正しくする土地地積更正登記のされた土地です。
このような土地の場合は登記簿に正しい面積(地積)が記載されています。
ただし、平成17年の不動産登記法改正前の土地分筆登記の地積測量図で分筆後の1筆の土地だけ求積して分筆前の登記簿の面積から引く所謂残地求積の地積測量図の場合は正しい面積(地積)が記載されているとは言えません。
3 まとめ
地積測量図は、法務局に備え付けられている図面ですが、すべての土地に地積測量図があるわけではありません。
地積測量図は、土地を分割する土地分筆登記、土地の面積を正しくする土地地積更正登記や地番がない土地に地番を付ける土地表題登記が申請された時に法務局に備え付けられます。
地積測量図がないことのメリットは全くないと言っていいでしょう。
反面、デメリットは3つほど考えられます。
①境界標がなくなった場合、復元ができない。
②売却する際に土地境界確定が必要となり売却に時間がかかる。
③地震や災害があった場合、登記簿記載の面積で判断される可能性がある。
多くの人が、自分の土地に地積測量図があるのか知らないと思います。
しかし、地積測量図は自分の大切な土地を守るために必要なものです。
これを機に自分の土地に地積測量図があるのか、ないのかを是非調べてみてください。
この記事が皆さんの大切な土地を安心・安全な価値にする一助になれば幸いです。