目の前に境界杭があるもののどこが境界なんだろう。
十字や矢印のもあるけどどう違うんだろう。
敷地の範囲は境界で囲まれた部分であり、その境界を示すものが「境界杭」です。
実際、「境界杭」にはいくつかの種類があり、同じ種類の「境界杭」でも境界を示す位置には数パターン存在します。
具体的に言うと、「境界杭」の種類には、コンクリート杭から始まり、石杭、プラスチック杭とあり、コンクリート杭だけでも、一般的な直矢・斜め矢・十字の3パターンあります。
我々は、専門家であり普段から境界を見たり観測したりしているので、「境界杭」の見方は当たり前だと思っていましたが、改めて書き出してみると、「境界杭」の見方を知りたいという気持ちが分かりました。
そこで、今回は一般的な「境界杭」の境界を示す位置がすぐに分かるようまとめてみました。
ぜひこの記事を読んで、自宅の敷地の「境界杭」を改めて見て下さい。
「境界杭」の見方が分かりスッキリするはずです。
1 境界杭の見方(一般事例)
「境界杭」をそれぞれ見て行きましょう。「境界杭」と「境界杭」を結ぶ直線が境界(土地の境い目)であり、その「境界杭」の示す位置を境界点と言います。
「境界杭」にはコンクリート杭、石杭、プラスチック杭の3種類があります。
また特殊な形状の道路境界杭というものもあり、これについては川崎市を例にあげて解説します。
1-1 コンクリート杭
コンクリート杭の種類ごとの境界点
① 直矢(↑)
境界点は矢印の方向に沿って、「境界杭」の表面を斜めに進んだ先です。上から見てコンクリート杭の外側になります。
矢印の先端ではなく、また表面の端でもないため、注意しましょう。
(コンクリート杭の見方(直矢のもの 側面))
(コンクリート杭の見方(直矢のもの 上面))
② 斜め矢(↖)
境界点は矢印の方向に沿って、「境界杭」の表面から斜めに進んだ先です。上から見てコンクリート杭の外側になります。
矢印の先端ではなく、また表面の端でもないため、注意しましょう。
(コンクリート杭の見方(斜め矢のもの 側面))
(コンクリート杭の見方(斜め矢のもの 上面))
③ 十字(+)
境界点は十字の交わる点、コンクリート杭の真ん中になります。
(コンクリート杭の見方(十字のもの))
④ 丁字(T)
境界点は丁字の交わる点になります。
(コンクリート杭の見方(丁字のもの))
⑤ マイナス(-)
マイナスの直線は境界(土地の境い目)の直線を示していて、俗に方向杭と呼ばれています。
境界点は、他の境界との交点になります。
次の写真では、境界杭が境界①を示しており、他の境界②と交わる点が境界点となります。
(コンクリート杭の見方(マイナスのもの))
1-2 石杭
次の写真は、石杭のうち御影石の境界杭になります。
一般的には写真のように、境界杭の中心付近の凹んだところが境界点になります。
経年により、表面が欠けていて境界点がどこか分からなくなっていることも考えられます。最終的には、過去の図面や調査により判断が必要です。詳しく知りたいときは専門家に相談しましょう。
(石杭の見方(御影石))
1-3 プラスチック杭
次の写真は、プラスチック杭のうち十字のものです。境界点はコンクリート杭と同様です。写真の例では、境界点は十字の交わる点、プラスチック杭の真ん中になります。
なお、プラスチックは、杭測量機器の設置場所の目印や境界の説明用に使用する一時的な杭にも用いられるため、いずれに該当するかは判断が必要です。
(プラスチック杭の見方(十字のもの 上面))
(プラスチック杭の見方(十字のもの 側面))
参考
プラスチック杭が「境界杭」として使用されるのは稀です。というのも、紫外線による劣化等の対候性がないため、仮の杭として使用するのが一般的なためです。
(境界杭として使用の経年のプラスチック杭)
1-4 道路境界杭
道路境界杭は道路の境い目を示しています。道路の所有者である都道府県・市区町村によってその形状は様々です。そのうち、川崎市が所有の道路に設置される道路境界杭を例にあげて説明します。
次の写真は、川崎市の道路境界杭です。種類は中心型、角型、側面型の3つあり、これは角型になります。境界点は分かりづらいですが、丸い刻印から出ている矢印の先になります。
(道路境界杭の見方(川崎市))
(道路境界杭の種類(川崎市))
(川崎市の「川崎市境界標設置ガイドライン」から引用)
道路境界杭は敷地の「境界杭」とは限りません。道路の境い目を示す目的で、道路が曲がる部分に設置されるからです。
次の図では、赤色が道路境界杭、青色が敷地の「境界杭」を表します。道路境界杭はあくまで道路の境い目を示しており、敷地の「境界杭」とは一致しないことが分かります。
(敷地と道路のそれぞれの境界杭)
コラム:木杭
腐食等による永続性がないため、「境界杭」として使用されませんが、測量では木杭という仮の杭を用いることがあります。建築中の敷地や測量を依頼した敷地で目にすることがあるかと思います。
測量機器の設置場所の目印や境界の説明用で使用し、その位置は木杭に打った鋲や塗布したペンキになります。
(木杭の見方(鋲のケース))
2 境界杭の見方(特殊事例)
次の写真では、コンクリート杭の上に金属標(白地に赤矢印)が貼られています。
これは測量結果や資料調査、関係する所有者からのヒアリングの結果、既存のコンクリート杭の位置ではなく、金属標の位置に境界が来ることが判明したケースです。
(境界杭+金属標)
次の写真では、コンクリート杭の外側に鋲(金色)が設置されています。
これは測量結果や資料調査、関係する所有者からのヒアリングの結果、既存のコンクリート杭の位置ではなく、鋲の位置に境界が来ることが判明したケースです。
(境界杭+鋲)
このように、「境界杭」とは異なる位置に境界点(境界を示す位置)が存在するケースがありますので、詳しく知りたい場合には専門家に相談しましょう。
3 まとめ
今回は「境界杭の見方」について書き出してみました。
「境界杭」にはコンクリート杭ほか様々な種類があり、それぞれの境界を示す境界点について解説をしました。
例)コンクリート杭の種類ごとの境界点
また、境界点を示す位置が2か所となっているケースを紹介しました。このケースでは、測量・調査による判断が必要なため専門家に依頼して判断してもらうべきでしょう。
なお、境界杭は絶対に境界(筆界)の位置を示しているとは限りません。地震等により本来の位置からずれている場合もあります。道路境界杭も幅の関係で敷地に入り、敷地の境界杭の一つとなる可能性があります。出来るだけ専門家に見てもらいましょう。
この記事が、「境界杭」の重要性について再考する機会となり、また少しでも安心して頂く材料となれば幸いです。
最後までお読み頂き有難う御座いました!
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