農地に住宅を建てた、宅地の一部を駐車場にして貸出を始めた。「地目変更登記」が必要と聞いたけどどうすればいいの?そのような経緯で「地目変更登記」と検索したのではないでしょうか?
「地目変更登記」は申請義務があり、申請を行わないことへの罰則も存在します。これにより、前者の地目は「田または畑」→「宅地」、後者の地目は「宅地」→一部「雑種地」と変わります。
地目変更登記についての専門家である土地家屋調査士が詳しく説明します。
「地目変更登記」を行い、安心安全な土地にしましょう。
目次
1 地目変更登記とは
地目(ちもく)変更登記は、地目(ちもく)を変更する登記のことです。
地目が変わったときは、その変更のあった日から1月以内に地目変更登記をする必要があります。
1-1 地目
地目は、土地の用途であり次の23種類から選択します。また、この地目は土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも土地全体としての状況を観察して定めるものとされています。
地目一覧
(不登規99)
それでは1つずつ見て行きましょう。
① 田
用水を利用して耕作する土地は「田」になります。「田」の具体例としては、水田があります。
② 畑
上記の「田」に対して、用水を利用しないで耕作する土地は「畑」になります。「畑」の具体例としては、野菜の栽培地、果物の果樹園があります。
③ 宅地
建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地は「宅地」になります。「宅地」には建物の敷地と一体として使用される家庭菜園や駐車場も含まれます。意外なものとして、ガスタンクや石油タンクの敷地も「宅地」に分類されます。
④ 学校用地
学校の校舎等の敷地及び運動場は「学校用地」になります。学校には、学校教育法が適用される幼稚園、小学校、中学校、大学等が該当します。学校教育法が適用されない塾の敷地等は「学校用地」に該当しません。
⑤ 鉄道用地
鉄道の駅舎及び路線の敷地は「鉄道用地」になります。「鉄道用地」には敷地と一体として使用される駅前広場も含まれます。
⑥ 塩田
海水を引き入れて塩を採取する土地は「塩田」になります。今は製塩法の発達により珍しい地目となっています。
⑦ 鉱泉地
温泉の湧き出し口及びその維持に必要な土地は「鉱泉地」になります。
⑧ 池沼(参考 ⑰ため池)
かんがい用でない水の貯留池は「池沼」になります。かんがいとは用水を耕地に供給することを言います。「池沼」の具体例としては、発電用のダム貯水池があります。⑰の「ため池」といずれかで判断します。
⑨ 山林(参考 ⑪原野)
耕作の方法によらない竹木の生育する土地は「山林」になります。タケノコや竹材の採取等、耕作の方法による場合は「畑」に分類されます。また、全体として、雑草、かん木類が生育する場合は「原野」に分類されます。
⑩ 牧場
家畜を放牧する土地は「牧場」になります。「牧場」には一体として使用される牧草栽培地も含まれます。
⑪ 原野(参考 ⑨山林)
耕作の方法によらない雑草、かん木類の生育する土地は「原野」になります。
⑫ 墓地
人の遺体・遺骨を埋める土地は「墓地」になります。
⑬ 境内地
本殿・拝殿・本堂等の宗教法人法に規定する土地は「境内地」になります。意外なものとして、教会の敷地もこの「境内地」に分類されます。
⑭ 運河用地
船舶の運航等のための水路等の運河法に規定する土地は「運河用地」になります。
⑮ 水道用地
専ら給水のための水道の水源地、貯水池等は「水道用地」になります。
⑯ 用悪水路(参考 ⑲井溝)
かんがい用水・悪水はいせつ用の水路は「用悪水路」になります。「用悪水路」の具体例としては、農業用水路、下水道があります。
⑰ ため池(参考 ⑧池沼)
かんがい用の水の貯留池は「ため池」になります。
⑱ 堤
防水のための堤防は「堤」になります。
⑲ 井溝(参考 ⑯用悪水路)
田畑・村落の間にある通水路は「井溝」になります。
⑳ 保安林
森林法に基づき農林水産大臣等が指定した土地は「保安林」になります。(森林法25、25の2)
「保安林」は水源のかん養や土砂の流出防備等を目的に指定されるため、指定が解除されていないと他の地目に変更することが出来ません。日本の森林面積の5割、国土の3割を占めると言われています。
㉑公衆用道路
一般交通の用に供する土地は「公衆用道路」になります。
㉒公園
公衆の遊楽のために供する土地は「公園」になります。
㉓雑種地
以上の22の地目に該当しない土地は「雑種地」になりますが、単純にその他=「雑種地」という訳にはいかず注意が必要です。駐車場や資材置場、ゴルフ場、飛行場など明確な目的に利用されていなければ、中間地目と認定されたりすることもある認定が難しい地目でもあります。
1-2 申請義務・罰則
地目変更登記には申請義務があります。地目の変更のあった日から1月以内に登記の申請をしなければいけません。また、罰則規定があり、10万円以下の過料に課される可能性があります。
(不登法37①、164)
地目の変更のあった日とは、宅地への地目変更の場合は新築年月日になります。具体的には、建物の検査の日、建物引渡証明書の引渡の日などです。不明な場合は年月日不詳などとします。また、変更のあった日は地目によって基準が異なりますので土地家屋調査士に相談してみましょう。
コラム : 住宅ローンとの関係(宅地への地目変更登記)
一般的に、地目が「田」「畑」(農地)のままだと、金融機関で住宅ローンを組む際にスムーズに手続きができない可能性があります。
農地は、所有権の移転をする際に農地法の届出(又は許可)が必要になることから、任意売却や競売手続きを進めることが出来ません。そのため、金融機関としては事前に農地法の手続き及び農地から宅地への地目変更登記を求められることも良くあります。
なお、市街化調整区域内では、農地法の許可手続きに時間を要したり、そもそも転用許可を受けるのが難しい場所があります。
建て替え等で住宅ローンを組む計画をするときは、まず計画地の登記上の地目が「宅地」かどうかを確認し、「宅地」以外の場合は素早く地目変更登記を行いましょう。
2 地目変更登記の手続き
手続きの流れは次の通りです(土地家屋調査士に代理を依頼した場合)
2-1 手続き
申請者(土地所有者)に関係する部分を青字で、土地家屋調査士に関係する部分を赤字で示します。
① 土地家屋調査士法人、土地家屋調査士に依頼
申請適格者かの本人確認、また地目変更が可能な土地かの判断が必要となるため、登記・調査の専門家である土地家屋調査士に依頼しましょう。
② 地目変更する土地についての打ち合わせ
どの土地について地目変更を行うか、また申請者の本人確認のため打ち合わせを行います。申請者は、必要に応じて書類を準備します。
③ 資料調査および現地調査
地目変更の対象土地の資料収集を行い、また現地調査を行います。そして地目変更が可能な土地か、その変更時期はいつか、地目変更をするために必要な書類が揃っているか確認、判断を行います。
④ 地目変更登記を申請
登記のための申請情報を作成し、また必要書類を添付し登記申請します。
⑤ 地目変更登記が完了する
地目変更登記が完了すると、登記完了証、全部事項証明書を受け取ります。
登記が完了すると次のように登記上公示されます。地目を山林から宅地へ変更したケースです。
地目変更登記がされた全部事項証明書(一部抜粋)
上記の全部事項証明書の見方は以下の通りです。
・地番(①欄)
地番に変更はないため使用されません。(一部地目変更分筆登記の場合は、分筆により地番が増えますので使用します。)
・地目(②欄)
山林から宅地へ地目が変更されたこと記載されます。
・地積(③欄)
山林から宅地へ地目変更されたため地積の表示単位が変わります。
(地積の表示単位)
・原因及びその日付
地目(②)と地積(③)が変更されているため②③と変更内容が、また変更時期(年月日)が記載されます。
2-2 専門家へ依頼
地目変更登記は土地家屋調査士に依頼しましょう。
地目が変更していることについて、現況の事実確認と根拠資料が必要となるためです。
登記には申請適格者であるかの本人確認が必要となります。また、地目変更登記については地目変更が認められる土地か、その変更時期はいつか、地目によっては必要書類が揃っているかの判断が必要となります。
判断の具体例
不安がある場合は、信頼出来る登記・調査の専門家である土地家屋調査士に相談しましょう。
3 地目変更登記の注意点
地目変更登記が出来ないケースや分筆登記が必要なケースがあります。一つずつ見て行きましょう。
3-1 出来ないケース
地目変更登記は、現況に他の地目としての永続性が認められないと行うことが出来ません。その他、特殊なケースも含め、地目変更登記が出来ないケースについて紹介します。
① 農地転用を受けられないエリア
「田」「畑」(農地)からそれ以外の地目への変更は、原則、農地転用届出(又は許可)を受けないと出来ません。
農地法の適用を受ける農地は、「耕作者の地位の安定、国内の農業生産の増大、国民に対する食料の安定供給の確保」を目的に、「農地を農地以外のものにすることを規制」と趣旨の一つにされています。つまりは、農業政策上、簡単に転用が認められないエリアがあります。(農地法4、5ほか)
農地にすべきエリアで、農地以外の用途に変更していると農地への原状回復命令が発令されることがあります。
ご参考までに、次が地目変更登記に必要な農地転用届出(又は許可)の手続きの大まかな流れになります。
*届出の場合は受理通知書が発行されます。
*農業委員会が無い自治体もあります。
*状況により届出を受け付けない自治体もあります。
② 中間地目(雑種地として)
下の画像の土地は区画整理地ですが、農地のまましばらく放置されており現状は雑草が繁茂する状況でした。この状態のまま雑種地(駐車場や資材置場など)として地目変更登記を申請しても登記は認められません。
雑種地は、その他の土地という意味ではなく駐車場、資材置場、ゴルフ場、飛行場、宅地に接続しないテニスコートなど不動産登記手続きの中である程度、利用目的が明確で永続的であることが必要です。いわゆる中間地目※は認められませんので注意が必要です。
※一時的に他の用途に使用されている状態
雑種地として登記が出来ないケース
③ 保安林
保安林からそれ以外の地目への変更は、保安林の指定解除を受けなければ出来ません。
保安林は土砂の流出防備等を目的に指定されるため、一定の手続きを行い、その指定解除を受ける必要があるためです。(森林法27、30、33)
ご参考までに、次が地目変更登記に必要な保安林の指定解除の手続きの大まかな流れになります。
3-2 分筆登記が必要なケース(土地の一部の地目変更)
土地の一部が他の地目に変わったときは分筆も必要となり、一部地目変更分筆登記を申請することになります。
土地の一部が他の用途に使われ、元々の用途に付随的といえないと不動産の一個性がなくなりますので、その部分の地目変更と併せて分筆が必要となるためです。この場合は、分筆登記の前提として土地境界確定測量及び地積測量図をする必要があります。
4 必要書類
地目変更登記に必要な書類は次の通りです。
① 申請情報
申請者が誰か(代理は誰か)、どの土地が、どの地目に、いつ変更となったかなど記載します。代理の場合は、土地家屋調査士が作成します。
② 委任状
申請について代理(土地家屋調査士等)をお願いする場合に作成します。
委任状は土地家屋調査士が用意します。土地家屋調査士が代理を行うことへの承認として、申請者は氏名・現住所の署名と捺印(認印も可)をします。
③ 農地転用届出受理通知書(又は許可書)
農地からそれ以外の地目へ変更の際に必要です。
④ 保安林指定解除通知書
保安林からそれ以外の地目へ変更の際に必要です。
このほか、相続があった場合の相続人からの申請などのケースでは、他にも書類が必要となりますので、地目変更登記を実行する際には信頼できる専門家に相談しましょう。
5 費用・期間
地目変更登記に掛かる費用
1筆(土地の単位、以下 筆)の地目変更で一般的には5万円程度です。
1筆追加ごとに2万円ずつプラスされます。
(例 3筆の地目変更 5万円+2万円×2→9万円)
*交通費及び許可書関係の取得費が別途生じる場合があります。
土地の地目確認など現地調査、書類調査完了までは概ね1週間〜10日前後です。
(申請者は必要書類を準備します)
必要書類が整い、また現地調査等が完了すれば、そこから申請書類を作成し登記申請を行います。申請から完了までは、概ね1週間〜10日前後です。
全体で、2〜3週間で完了となります。
農地や保安林からの地目変更で、必要書類に農地転用届出受理通知書(又は許可書)や保安林指定解除通知書がある場合は、その取得までの期間も考慮する必要があります。ご注意ください。
6 まとめ
今回は地目変更登記について書き出してみました。農地からその他の地目への地目変更登記には一定の手続きが必要です。ほかにも地目変更登記に当たって注意すべき点がありますので、登記の専門家である土地家屋調査士に一度相談しましょう。
専門家に依頼すべき理由
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